日本の方がいいなぁとスペイン生活にブツブツ言っていた私ですが、今日からはスペインでの生活に幸せを感じる決心!!!


と言うのも、最近読んだ小説


 
カルロス・ルイス サフォン, Carlos Ruiz Zaf´on, 木村 裕美
風の影〈上〉風の影〈下〉

ずっとこっちの本屋さんでも気になっていたところ(こっちではLa sombra del viento)、お友達が持っていると言うことで日本語版を貸してもらうことに。

この小説は1人の少年がある本に出会った事によって、思いがけない事件に巻き込まれていくというミステリーで、その中に様々な人間関係があり、愛や憎しみなどが絡み合っていき、読み終わるまで息をつけない内容で、読み終わった後も強い余韻が残る、37カ国で翻訳されているというのにも納得がいくものでした。


内容自体にもすごい感銘を受けたのですが、それと共にその時代のスペインの状態に衝撃を受けました。

物語は内戦後のバルセロナを舞台に繰り広げられていくのですが、当時のスペインは今のスペインからは想像できないものでした。


と言うのも、恥ずかしながら私はこっちに来るまで、つい何年か前までスペインが独裁政治下にあった事を知りませんでした。私には、Siesta(お昼寝)してばかりのちょっとぐうたらな人達、太陽と海とオレンジと、とそんな陽気で明るいイメージしかありませんでした。


ところが、スペインが今のような民主主義に移行したのはつい30年程前、1975年の独裁者フランコの死後の事なのです。

第2次世界大戦が終わり、ヒトラーもムッソリーニもいなくなり、日本にも平和が戻り、いざなぎ景気に沸いていた頃も、西ヨーロッパの中で、スペインでは独裁者による独裁政治が続いていたのです。

この小説には当時の秘密警察の理不尽なやり方や人を人と思わない処遇、今ではオリンピックスタジアムで知られるモンジュイックが、昔はモンジュイック要塞として恐れられ、そこでは信じられないような拷問が行われ、連れて行かれたものはほとんど帰ってこない、そんな場所だった事などが鮮明に記されていました。


幸いな事にフランコが死亡し、なぜかそのフランコが死の前に後継者に指名したのが今の国王であるフアン・カルロス1世で、スペインはその後急速に民主化を進め、今のような平和な自由な私達が抱いているイメージの国になった訳ですが、今のこの平和な世の中にまだまだ独裁政治や理不尽に虐げられている人々が存在することを思うと、スペインのスィーツがまずい!とか、たまに電話が繋がらなくなるとか、そんなちっぽけな事でブチブチ言えるというのは、幸せの証拠なんだなぁと思いました。

やっぱり日本に帰りたくなることはあるけど、でも今のスペインで生活できるだけでも幸せと思わないと罰が当たりますよね!!!


小説、本当に面白いのでお薦めです。

でも、新婚なのに、フリアンくらい強く誰かを愛した事があるか疑問に思う私、やばい???